夏の名残りの薔薇

ひさびさの恩田作品です〜〜〜〜!!!



夏の名残りの薔薇 (文春文庫)

夏の名残りの薔薇 (文春文庫)

読み始めたときは珍しくなかなか入り込めなくて、「あれ、しばらくしないうちに恩田作品と相性悪くなった?」なんて思いましたが、読み終わってみると「さすが恩田さん!これぞ恩田作品!!!」て思っちゃってるあたりやっぱりまだまだ大好きみたいです(笑)恩田作品独特の、雰囲気は優しくてふんわり柔らかいのにときどきチラチラと恐ろしさやグロテスクさが見え隠れするかんじで。
じゃあ、なんでそんなになかなか入り込めなかったんだろう、ってことなんですけど、たぶん途中途中に一見関係の無さそうな映画の脚本が引用されていることとと、各章でそれぞれ語り手が変わるんですが、それが男であれ女であれ地の文での一人称がすべて「私」なので読み始めてしばらくするまで語り手が誰なのか誰の目線での描写なのかというのがわからないということが原因なんじゃないかなと思いました。でもこれも読み終わってから考えれば、それらのバランスは本当に絶妙でこの作品にとってすごく効果的に作用しているよなあと感じられました。あと、たぶんこの作品の一番の特徴とも言えるだろうと思われる、時間が着実に進みながらもそこで起こったはずの出来事が少しずつ変化しているという構成もすごくおもしろかったです。

あと、完全に個人的な好みの話ですが。わたしが特に大好きな恩田作品のひとつが「黒と茶の幻想」で、その中でも蒔生がとても好きなのですが、「夏の名残りの薔薇」の中に出てくる桜子が(精神的になどではなく振舞いなどにおいて)蒔生のようですごく好きでした(笑)